現在までに私は、遺伝子の発現制御に代表されるシグナル伝達経路の新たな仕組みを解明し、さらにその破綻が生活習慣病・細胞分化異常・老化などに深く関わっていることを個体レベルで解き明かしてきました。

核内ビタミンD受容体(VDR)による高次生命現象の制御

 VDRノックアウト(KO)マウスを世界で初めて作成し、VDRを介したビタミンDの多様な高次生命現象を解明しました4) 6) 11) 34)

骨と靭帯の骨化を調節する遺伝子発現謝制御機構の解明

 世界初の靱帯細胞株を樹立し14)、靭帯には骨化能があるが通常は強力に抑制されている遺伝子発現制御機構を解明しました20)。また、寝たきりなどで骨形成が低下する分子基盤として、機械的刺激による骨芽細胞分化促進機構の一端を解明しました23)

骨による糖・エネルギー代謝制御機構の解明

 骨由来ホルモン(オステオカルシン)による糖代謝制御の新規分子機構を解明しました27) 30)。これらにより、糖尿病では骨にインスリン抵抗性が生じて骨粗鬆症リスクが増すこと、さらに、骨吸収が低下するとオステオカルシンの分子活性化が損なわれることが明らかになりました。

SIRT7による高次生命現象の制御

 NAD+依存性脱アシル化酵素サーチュインの一つであるSIRT7が、様々な転写因子や酵素などの翻訳後修飾を調節し、糖・脂質代謝37) 44) 58)、認知機能46)、炎症50) 52)、骨代謝51)、軟骨代謝49)、老化62)、褐色脂肪組織によるエネルギー代謝63)を制御することを解明しました。